ーみどりの金魚ー
水槽の中にある一匹の金魚がいました
金魚は外の世界を知らず
ただ人間から与えられた場所で生きてきました
ある日 金魚は思いました
誰かに生かされる日々を過ごすのではなく
もっと大きな世界で生きたいと
そして金魚は水槽の中から飛び出すのです
外の世界は金魚にとって初めてのことばかりでした
水の中でも月が出ることを知り
夜になると
小さな光たちが暗闇を照らすことを知り
風が温かいものだと知り
外の世界は
こんなにも沢山の音や色に
囲まれているのだと知りました
しかし 進むにつれ 金魚はふと思うのです
【私は一体どこに進めばいいのだろう】
そんな中 金魚はある一匹の真っ赤な金魚と出会いました
金魚は真っ赤な金魚に問いかけるのです
【キミはどこに向かっているのだい?】
真っ赤な金魚は答えるのです
【どこにも向かっていないよ
ボクはただ風に身を任せているだけなんだから】
真っ赤な金魚に別れを告げ
金魚は雲から差し込む光を眺め
また前に進みだすのです